インタビュー

人形劇を通して伝える思い

保育士 田中はる子

 8月5日から8日、長野県飯田市においていいだ人形劇フェスタ2010が開催されました。フェスタに毎年参加している長野県松本市の人形劇団「やまんば」の団員であり保育士の田中はる子さんのインタビューを紹介します。

オリジナル作品を創って上演

 人形劇団「やまんば」は26年前に松本でスタートした劇団です。私はその団員として活動しています。「やまんば」という名前はひとつの人形劇からつけられた名前です。
 人形劇をはじめたきっかけは「やまんば」の前身である「人形劇団わたげ」の人形劇を観てとても感動したからです。初めて見た作品は『フーちゃんのマジックショー』という作品でした。とても楽しい世界だなあと感じて劇団に入って活動するようになりました。当初は公民館を借りて週一日集まり、自分たちで道具や人形をつくり上演していました。
 多くの劇団は既存の作品を上演するのですが、私たちは松本に生まれた劇団として、地域の特性や古くから伝わる信濃の文化や民話を題材にしてオリジナルの作品をつくってきました。昔話をきくためにお年寄りを訪問したり、地域文化を研究している人を訪ねて話を聞いたりして、信濃に伝わる文化や民話を掘り起こし、それをお話に盛り込んで創作してきました。人形も音楽も舞台美術もすべて自分たちの力で創って上演してきました。私は「やまんば」のなかでは主に音楽を担当しています。
 自前の人形劇を地域の子どもたちや大人たちに見てもらっていろんな感想を聞き、それをまた作品づくりに活かしながら活動しています。

地域の人々が支える人形劇フェスタ

 いいだ人形劇フェスタは歴史があり、今年の8月でフェスタとしては12年目となります。その前に、飯田人形劇カーニバルというお祭りがありました。それは、20年の歴史があります。合計で今年は32年目の夏になります。
 もともと、地域おこしのためにふるさと創生資金で、全国のプロアマの人形劇団と飯田市と住民の三者で協力してお祭りが始まりました。そこから20年間人形劇カーニバルとして開催されてきました。12年前に財政的な問題もあり、人形劇団、飯田市も手を引くということになりました。そこから住民主体のお祭りとしようということで「いいだ人形劇フェスタ」と名前を変えて続いています。飯田下伊那地方の住民の皆さんが公民館、保育園、小学校などを使って、人形劇団を誘致する形に変わりました。飯田市も公民館職員を通して関わりをもち、地域の活動を強力にバックアップしています。住民主体で人形劇のお祭りを作り上げていくということで人形劇フェスタが毎年運営されていて、12年を数えるようになっています。
 私たちは20年間、自分たちの作品をもってこのお祭りに参加しています。飯田の皆さんの他、全国から集まった劇人の皆さんにも見てもらうことができるので、人形劇を通して自分たちの思いが届いているかということを確かめるという意味では、いいだ人形劇フェスタは道場のような存在としてあります。

安心して子どもが育つ社会を

 私は保育士として仕事をしています。保育士になって35年目になります。子どもを取り巻く社会の状況というのは変わってきています。最近は社会全体が忙しくなっていますから、働いているお父さんお母さんの要望に応じて子どもたちを朝早くから、夕方遅くまで預かるようになっています。11時間、12時間開所している園が多くなりました。勤務している私たちも朝早くから夜遅くまで働くことになります。常時子どもたちが園にいるので、保育士同士の話しあう時間が取れていないというのが現状です。社会の変化に伴い、子どもにもいろいろな影響があります。そのような子どもの状況について改善するためにじっくり話し合って保育を進めるということが難しくなっていると感じています。お父さんやお母さんが忙しい中でも、子どもたちを中心に据えて家庭生活を送ることができたり、家庭での養育をきちんとしてもらえるように、園から家庭へ発信すべきことを職員でよく話し合い、伝えるよう心がけています。
 子どもたちがこれから育っていく社会を良い社会にしたい、一人ひとりの人間が大事にされる社会、安心して子どもたちが育つ社会を大人が創っていかなければならないと思います。

人形劇を通して伝えたいこと

 人形劇を通して人と人とのかかわりはこんなに温かいものだということや、人って優しい気持ちを持っているということを伝えていきたいと思います。人間は一人では生きていけません。多くの人たちと関わりを持ちながら社会をつくっています。一人ひとりが尊重される社会であって欲しいと思っています。人形劇は演劇と違って、人形を媒体としてメッセージを伝えていきます。子どもにわかりやすく親しみやすい表現方法をとりながら、人間のもっているやさしさや、力強さ、人間同士が助け合ったり励まし合ったりして生きていくことが本当に人間らしい生き方だということを伝えていきたいと思います。