視点

戦争のための基地はいらない

〜日米安保条約は廃棄できる〜

日米安保はアメリカの利益のための体制

 アメリカは、韓国との間に2国間同盟である米韓軍事同盟をつくり、日本との間には日米軍事同盟をつくっています。日米軍事同盟は法的には日米安保条約や日米地位協定によって裏づけられています。
 日本が第2次世界大戦に敗北した後、マッカーサー連合国軍最高司令官が日本に入り、アメリカの占領支配がはじまり、今日までつづいています。アメリカの占領を法律によって明確にしたのが、多国間条約であるサンフランシスコ条約です。そのとき同時に日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧安保条約)が結ばれます。その旧安保条約が1960年、70年と改定されて今日の日米安保条約になっています。
 1960年に旧安保条約を改定して締結された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(新安保条約)では、期限を10年とし、以後は締結国からの1年前の予告により1方的に廃棄できると定められています。1970年以降は、1年前に日米のいずれかが通告すれば廃棄できるようになっています。ところが、日本の多くの人々は、日米安保条約は廃棄できないものである、日米安保条約とそれにもとづく日米軍事同盟が強固であると思い込まされています。
 1960年に新安保条約が締結される際には、日本の過半数の人々が反対し、日本の全国に安保反対運動が巻き起こりました。ところが、一党独裁をつづけてきた自民党が、国会で強行採決をおこなって、日米安保条約の締結が採択されました。1970年にも新安保条約延長にたいして多くの人々が反対しましたが、国会で自民党が単独過半数を背景に、強硬に押しきりました。
 日米安保条約廃棄の動きを、アメリカがいつも封じ込めてきました。
 1972年の沖縄返還時に、核兵器の日本への持ち込みについての密約が結ばれていたと言われてきました。しかし、具体的に密約について明らかにしようとした政府の要人はつねに要職を追われたため、密約の存在を公表することはできませんでした。密約の存在が明らかになれば、日米軍事同盟の存続に障害が生じるため、アメリカ側から封じ込めるための策動があるのです。
 日米安保体制に異議を申し立てることは、日本の政治家にとって、ここ数十年間タブーとされてきました。マスコミも日米安保条約に異議を申し立てることなく、一斉に意図的に口をつぐんだ状態で今日まできました。
 ところが、民主党が政権をとって以降、鳩山由紀夫首相は、日米間の密約の存在を調査するよう指示するとともに、日米間の不平等な政治的軍事的関係に異論をはさむ立場をほのめかすようになりました。そのため、鳩山首相を追い落とそうとする脅しが加えられています。

破綻しつつある日米安保体制

 日米安保体制はいくつかの変遷を経てきました。
 第2次世界大戦直後は、アメリカが日本を植民地として占領支配するために、日米安保体制がとられました。
 第2段階として、世界の冷戦体制のもとで、ソ連や中国を封じ込め、帝国主義が反共政策を貫くために、アメリカには、米韓の同盟関係とともに、日米安保体制が必要となりました。
 ところが、冷戦体制崩壊後、ソ連や中国に対抗する軍事同盟の必要性が消失しました。従来の日米安保条約がもはや現代にそぐわないことを前提にして、小泉純一郎元首相が2006年に訪米し、ブッシュ前大統領と会談して新世紀の日米同盟を発表しました。アメリカが日本を支配するために日米安保体制が必要であることを露骨に表現できないために、抽象的な表現で一貫した内容になっています。
 日米安保体制はもはや実質的に破綻してきています。
 アメリカの民間調査機関ピュー・リサーチ・センターが12月3日に発表した世論調査結果によれば、アメリカが他国には関与せず自国の問題に専念すべきと答えたアメリカ人は全体の49%で、2002年の調査時の30%から大幅に増加しました。アメリカ国内で、アメリカが世界の問題に口をはさむことなく、自国の問題に専念した方がよいという意見が多数を占めるようになってきています。
 同じ世論調査で日本の位置が急速に低下していることが明らかになっています。アメリカにおいての軍事的関係のみならず、政治的経済的関係においても、日本の位置は急落しています。
 世界経済を主導する国はどこかという質問にたいして、44%が中国、アメリカが27%、日本は13%となり、アメリカの人々は中国が世界経済を主導しているとみるようになっていることがわかります。また、将来のアメリカにとってどの国がより重要な同盟国になるかという質問にたいして、中国と答えた割合が58%、インドが55%、日本は第6位の16%にとどまりました。アメリカの人々の日本にたいする評価が下がってきています。
 小泉元首相はブッシュ前大統領とともに、日米軍事同盟は世界の安保体制の基軸であると表明しましたが、いま日米軍事同盟が世界の基軸であるなどと考えている人はいないでしょう。
 イラクやアフガニスタンは経済的に貧しい国々であるため、アメリカにとって経済的なメリットが少ないことは明確であり、軍事的な利害関係が突出しています。日本や韓国にたいしても、アメリカにとっては経済的メリットよりも、軍事的な位置づけが大きいのです。中国を念頭におけば、アメリカにとって、在日米軍基地と在韓米軍基地が重要な拠点であることが明らかになります。
 一方、日本や韓国にとっては、アメリカとの関係は経済的なメリットが突出しています。イラクやアフガニスタンの支配層にとっても同様に、アメリカとの関係を維持すれば経済的メリットが大きいのです。アフガニスタンのカルザイ大統領のようにアメリカとの関係で私腹を肥やしている支配層も少なくありません。
 ところが、アメリカの世論調査にもあらわれているように、アメリカにとって経済的に重視すべき国は、中国、インド、ブラジル、メキシコ、ロシア、ナイジェリアなどの新興経済大国です。今後アメリカは経済関係の比重をこれらの新興経済大国に移し経済関係を強化していくでしょう。
 日米軍事同盟は、アメリカが中国やロシアなどの大国を抑えるための軍事的拠点確保のために必要なだけであって、日本や日本の民衆にとってはまったく不利益のみもたらすものであることは明らかです。

普天間基地移設問題の本質

 いま政治の焦点にあげられているのが沖縄の基地問題です。沖縄には全国の米軍専用施設面積の75%が集中しています。今年10月31日と11月1日に毎日新聞と琉球新報が合同で沖縄県民を対象に実施した世論調査では、67%が普天間基地の辺野古への移設に反対しています。
 普天間基地移設問題をめぐってさまざまな主張が述べられています。社会民主党はアメリカのグアム島か東京都小笠原村に属する硫黄島を主張しています。大阪府の橋下徹知事は、関西空港への普天間基地移設を容認する途方もない発言をしています。北海道の苫小牧市の苫東地域が経済効果を期待して移設候補地として名乗りをあげたり、高知県の宿毛への移設が取りざたされたりしました。
 普天間基地移設をめぐって論議されている内容には、2つの問題があります。
 一つは、在日米軍基地が必要であることを前提にしていることです。米軍基地は、戦争のため、人を殺すための基地です。その基地をめぐってたらい回しの議論がつづいています。在日米軍基地が絶対に必要であるという前提での論議が先行するのはおかしなことです。もう一つは、日米安保体制は必要であり動かせないものであることを前提にした論議が独り歩きしていることです。日米安保体制は、すでに少しでも押せば崩れる状態になっています。ところが、日本のなかではすべての人々が日米安保体制を支持すると意志一致しているかのような状況があります。どこかが米軍基地やその負担を受け入れなければならないという議論になっています。
 日米安保体制とは、そもそも日米間の差別的で不平等な体制であり、その下で沖縄において少女暴行事件がおこり、抗議の10万人集会がおこなわれました。そして世界でもっとも危険である普天間基地の移設問題が出てきたわけです。

自主的政策を打ち出し基地問題の解決を

 普天間基地移設問題と関連して、米軍への思いやり予算の問題も注目されるようになりました。
 日本政府は現在、国の財源確保で苦しんでおり、財政赤字が今後1000兆円を突破すると言われています。鳩山政権が自民党政権との違いを打ち出す目的もあって、この間事業仕分けをおこないました。政府は当初、仕分けに聖域はないとして、在日米軍の駐留経費の一部を日本が肩代わりしている思いやり予算にも手をつけました。思いやり予算は、多いときは約3000億円にのぼり、まさに必要のない予算です。今回思いやり予算について一応政府は検討しました。結論はアメリカに渡す分は何一つ触れず、在日米軍基地で働く日本人労働者の特別手当をカットするだけになりました。今後、日米安保条約が日本にとって必要なのか否かが論議されるようになるでしょう。日米関係のあり方にたいする意見が少しずつ出てきており、日米安保条約はなくてもよいのではないかと言う人もいます。
 アメリカは、自らに従わない政権にたいして揺さぶりをかけることを常套手法にしています。鳩山政権がいま、アメリカから揺さぶりをかけられている第1の理由は、日米の密約を公表しようとしているからです。日米の不平等な密約の存在は、すでにアメリカの公文書で公開されているので、日本としては隠す必要がありません。ところが、アメリカは日米安保体制にひびが入ると言い出しました。アメリカは、密約の公表をおこなうならば、普天聞基地の県外移設はありえないと言いだしました。辺野古移設以外に選択肢はなく無視するならば普天間からの移設自体も白紙に戻すとアメリカは脅しています。
 本来、日本に他国の基地があること自体がおかしなことです。異常な状態を半世紀にもわたってつづけて来た従属的な日米関係を今こそ断ち切り、「戦争のための基地はいらない」と声をあげていきましょう。