インタビュー

遺族に寄り添い、悲しみを分かち合う人々のネットワーク

平山正実さん(精神科医)

平山正実 1938年生まれ
精神保健指定医
日本臨床死生学会理事
横浜市立大学医学部卒業 
著書 「自ら逝ったあなた、遺された私」(朝日選書)
「はじまりの死生学」「突然の死とグリーフケア」(春秋社)
「ケアの生命倫理」(共著、日本評論社)など多数

 日本では、年間の自殺者が7年連続して3万人を越えています。一人の自殺者の背後には親、配偶者、兄弟姉妹、子どもなど5人の遺族がいると言われています。NPO法人グリーフケア・サポートプラザ(自死遺族に対する精神的支援団体)理事長の平山正実先生にお話を伺いました。

―グリーフケア・サポートプラザ(以下サポートプラザ)はどのような活動をされていますか。

 遺族の悲しみはとても大きく、自分を責めてうつ病になったり、周囲の心ない言動や差別、偏見にさらされたりして後追い自殺をする人もいます。また、家族が崩壊することもあります。
 遺族を社会的に支えていく体制が求められるなかで遺族に寄り添い、悲嘆を分かち合っていこうとするグループが各地で生まれました。
 サポートプラザは今から五年前に発足し、電話相談(毎週木、土曜日)をして遺族の悲しみや苦しみの受け皿となったり、「分かち合いの会」(毎月第三日曜日)をおこない、同じ体験をした方たちが誰にも話せない思いを語りあう機会をつくったりしてきました。
 また、全国に同じような支援グループが約20団体あるなかで昨年11月19日、初の全国組織「自死遺族ケア団体全国ネット」が設立されました。(代表は平山正実先生)
 わたしたちのこのような取り組みについても多くの人に知らせて実際に役立てていきたいですね。

―自殺は個人の問題というより社会全体の問題ですね。

 そうです。中高年の自殺率と失業率は重なっているので社会的な問題が要因といえます。しかし北欧では、自殺率と失業率は必ずしも一致していません。失業してもケア体制があるからです。
 日本では核家族化がすすみ、共同体の機能も弱くなっていることなどセーフティネット(経済的危機に陥っても最低限の安全を保障してくれる社会的な制度や対策)が機能していないので、先進国のなかでも自殺率が高いのです。  
 個人ではなく、社会や周囲の人々も含めた連帯責任ともいえます。

―自殺と自死とは違うのですか。

 わたしたちは自殺と自死とを区別しています。「自」はおのずとも読むし、みずからとも読みます。自殺は自ら死ぬ意志があった場合に使い、自死は自分の意志ではなく、環境や対人関係が原因で病気になり、命を奪われてしまう場合に使っています。

―この活動に取り組まれたきっかけは何でしたか。

 わたしは昔塾で勉強をしていたときに視覚障がいをもつ方に教わったことがありました。視覚障がいがありながら人々に貢献している姿に影響を受け医学部に進学しました。
 教育の果たす役割には大きいものがあります。
 また友人が自死したことも関係していると思います。

―今後はどのような課題がありますか。

 わたしたちはボランティア中心でやっていますが、ボランティアだけでは限界があるので、国や地方自治体との協力体制が必要となっています。また、遺族を支援していくうえで、サポートプラザだけではなく、全国ネットのリーダーたちの質も高めていかなくてはなりません。そのためには、合同研修をしたり、情報交換をしたりする必要があります。
 ボランティアは時間やお金、時には自分の健康さえも捧げることがあります。ここには弱肉強食の原理とは別の自己犠牲の精神があります。親は自分が犠牲になっても子どものためにつくしていきます。そのような精神を次世代にも伝えていきたいですね。

―これからの日本の社会はどの方向にすすむべきでしょうか。

 人と人との絆、信頼関係を構築していくことに尽きると思います。それがなく、人間関係が分断されているためにさまざまな問題が起きているのです。人間は完全ではないですが、少しでも完全に近づいていく努力、志向性が必要ではないでしょうか。

(2月22日編集部でインタビュー)