視点

住の安全をおびやかす耐震強度偽装

 2005年12月5日、国土交通省は、構造計算書を偽造して耐震基準に満たない危険な建築物を建てさせたとして、建築基準法違反の疑いで姉歯秀次元1級建築士を刑事告発しました。
 姉歯氏による構造計算書の偽造による建築物は、国交省が確認した分だけでも12都道府県55棟に上っています。
 どれも耐震性が基準値の26〜33%しかなく震度5強の地震でも倒壊の恐れがあります。
 耐震強度偽装があったマンションの住人は引っ越ししなければならなくなり、ホテルなどは営業停止に追いこまれ、社会問題となってきました。
 今後の調査により基準を満たさない建築物はさらに増えそうです。

民営化すれば金儲けに走る

 マンションやホテルなどを建てる際には、建築基準法上の安全基準を満たし、書面での建築確認や現場での検査を受ける必要があります。
 姉歯氏がかかわった大半の建築検査は 民間検査機関のイーホームズが担当していました。イーホームズは基本的なチェックを怠り、偽装を見抜くことができませんでした。姉歯氏が手がけた構造計算書の偽造は6年前の1999年までさかのぼります。
 行政が一手に担ってきた建築検査業務が民間に開放されたのが1999年からでした。
 現在は国などの指定を受けた民間検査機関は122もあり、2004年度では建築確認件数の56%を担うまでになっています。
 民間検査機関は金儲けや効率を求め、法律に抵触しない瀬戸際のところで検査を通し、次第に違法行為をおこなうようになってきました。
 現在は、なぜ民間検査機関は姉歯氏の構造計算書の偽造を見抜けなかったのか、不動産会社や建設会社は、コストを下げるために偽装を指示したのかなどの調査がすすめられています。
 政府は構造改革を積極的におこなうことが国民に利益をもたらすかのように宣伝をしています。
 しかし、現実は、民営化によって金儲け主義がはびこり、今回の耐震強度偽装問題のような事件が多発する恐れがあります。
 民間検査機関は儲けることだけを追求し、安全性に問題があったとしても発覚しなければ良いと考えています。
 今後さらに民営化により金儲けに走る傾向が強まり、さまざまな弊害があらわれてくるでしょう。

人間のためにすることは無駄ではない

 政府は、民営化を実施することで無駄を無くすと宣伝しています。
 一般的に使われる無駄と政府が言う無駄の概念を正しくみていくことが大切です。
 政府のとらえる無駄とは、金儲けにつながらない、利潤追求のできないものを意味しています。
 この概念から、福祉、教育、医療、環境など直接利潤につながらないものは無駄ととらえ、切り捨てる対象にしてしまうということです。
 今まで税金でまかなわれていた公共的なものが市場に転化され、金儲けの手段となっています。
 医療改革協議会において、2006年度医療制度改革大綱が決定されました。
 大綱では、高齢者の医療費窓口負担の増加や75歳以上の高齢者医療制度の増設、診療報酬の引き下げ、国民健康保険や政府管掌健康保険などの保険者再編などが検討されています。
 金儲けや効率を優先したり、利益にならないことは無駄とする考え方に対抗して、あらゆることを人間のためにおこなうという基準から出発していかなければなりません。