視点

郵政民営化は誰のためか

 8月8日、郵政民営化関連法案が参議院本会議において、反対125票、賛成108票の17票差で否決されました。
 それに先立つ7月5日、衆議院本会議では同法案は5票差で可決されました。
 小泉純一郎首相は、衆議院では可決されたにもかかわらず、参議院での否決直後に衆議院を解散しました。

二院制を否定

 参議院は予算案の決定については権限はありませんが、衆議院の行き過ぎをチェックする機能をもっています。
 一般的には参議院で否決されたならばその法案は廃案になるか、再度衆議院で採決をやり直すことになります。今回参議院で否決され、衆議院では可決されたのに衆議院を解散すること自体が議会制度における二院制を否定する行為です。
 また、選挙をすれば諸経費として約1千億円もかかるとみられています。無駄を省くために小さな政府をつくる、構造改革をするという小泉首相の主張とは矛盾します。選挙には莫大な税金が使われるのです。

世界一の郵便貯金

 日本の多くの人々、特に高齢者は郵便局に貯金をしています。地方には銀行はないところはあっても郵便局はどんな過疎地にもあるからです。
 日本全国の郵便局の貯金高は合わせると、約331兆円にもなります。これほどの額の貯金をしている銀行は世界にはありません。
 郵便貯金に目をつけたアメリカなどの外国資本は、はやくから郵便局を民営化することを日本に要求してきました。
 郵便局を維持するためには、土地、建物、職員などが必要です。これまでは採算がとれなくても公共性があったため税金を投入して、過疎地にも郵便局を設置し、維持してきました。
 小泉首相は、「郵政民営化は民間の企業活動を活性化して日本の景気を一気に回復していく鍵」と主張していますが、大資本家や外国資本にとって有利になるだけです。
 また、郵便局が民営化され、利潤追求の市場原理が作用することにより、地方の小さな郵便局がつぶれていくことは時間の問題です。
 自民党のなかにも郵政事業関係者に支持者が多い郵政族と銀行関係者に支持基盤をおく銀行族がいます。今回、自民党が郵政民営化をめぐって分裂したのは、互いの利害関係を主張し、争っていることによります。

日本総体の問題

 約331兆円の郵便貯金は何に使われているのかというと、それで日本の赤字国債が買われているのです。
 最近、日本道路公団発注の橋梁(きょうりょう)工事の談合事件が摘発されました。郵便貯金で国債を買うことと、それによって公共事業がおこなわれ、建設関連の大きな会社が談合することとは結びついています。
 郵政民営化法案は郵便局をどうするのかということにとどまらず、日本総体の問題につながっています。
 小泉首相が衆議院を解散したことにより、一時的には円安になりましたが、すぐに円高がすすみ、株価も上昇しました。毎日新聞社が8月13日、14日に実施した世論調査では、小泉内閣の支持率は衆院解散直後の調査(8月8、9日実施)を5ポイント上回る51%になりました。

市場原理ではなく、人間中心の社会を

 いま世界は自主、平和、協調の方向にすすんでいます。アメリカの国会議員のなかにもイラクは泥沼化しているので米軍は撤退した方がよいと考える人が増えてきました。
 郵政民営化は、日本国内だけではなく、世界的範囲で市場原理を貫くという考えです。
 強く大きなところが勝ち、弱く小さなところが負ける、弱肉強食の社会は人間的ではありません。
 構造改革が徹底される社会、金持ち、権力中心の社会ではなく、人間中心の社会にしていくことが求められています。

(山内 勝)