展望

中南米諸国に広がる非米自主

 現在、世界の先住民族の運動に新たな潮流が生まれています。先住民族の運動でとりわけ大きな変化が生じているのは中南米諸国です。
 長期にわたりアメリカと軍事独裁政権の支配下にあった中南米諸国は、2000年代にはいって、パラグアイ、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン、パナマ、エクアドル、ウルグアイなどで中道政権や左派政権がつぎつぎに成立しています。

先住民族が政権を担う

 今日の中南米諸国の新しい潮流を代表する国はベネズエラです。
 ベネズエラではウゴ・チャベス氏が1999年に大統領に就任して以来、国の自主権をかかげた新しい政策を推進しています。
 ベネズエラの人口の構成比は、先住民族2%、混血66%、白人22%、黒人10%であり、先住民族が占める割合はわずかですが、先住民族の大統領が選出されて政権を担い、さらに中南米諸国全体に影響を与えています。
 ベネズエラの正式な国名は、ベネズエラ・ボリバル共和国です。ベネズエラの国名は、シモン・ボリーバルの名にちなんで命名されました。
 彼はラテンアメリカをスペインの植民地支配から独立させ自由で平等な社会を実現することをめざし、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビアの独立のために大きな役割を果たしました。
 彼の銅像は世界のいたる所にあり、世界の偉人のなかでもっとも多く建立されています。
 エクアドルも中南米諸国のなかで注目すべき国です。
 エクアドルでは、2003年1月に先住民族の政党パチャクティク(PNP)と進歩的政党である愛国的社会1.21党(PSP)などが連立政権を成立させました。
 エクアドルの先住民族は全人口の約34%であり、圧倒的多数を占めているわけではありませんが、先住民族の代表であるPNPが政権に参加し、外相など閣僚のポストを担いました。

新しい動きの特徴

 現在、中南米諸国の新しい動きの特徴の一つは非米です。
反米でもなく、従米、崇米とも異なる非米は、アメリカと対立せず、一定の距離をおいて国の政策を自主的に決定するという立場です。
 中南米諸国の新しい動きの特徴の2つめは、自主の立場が確固としているということです。今日、中南米諸国で社会主義をめざしている国は、キューバだけです。その他の国は自主の立場を堅持する政策をとっています。
 中南米諸国の新しい動きの特徴の3つめは、先住民族が多数派を形成して政権の座についていることです。
 従来、少数派の人々が政権の座につくためには、武力で政権をくつがえして政権を奪取していました。現在、中南米では、少数派の先住民族の代表が、広範な人々に根づいて多数派を形成して選挙で過半数の支持を得て、政権を担当しています。
 これまで、一般的には民族自決権は、一定の地域で民族の自治を実現したり、一つの民族だけの国家をつくり独立したりすることをさしていました。
 しかし現在はベネズエラやエクアドルなどのように、先住民族が多数派を形成し政権をとり、直接国家の政治を担うようになっています。

誇りと尊厳をもって生きる

 少数派が広範な人々に根づき多数の支持を得るようになる要因の一つは、少数派が他にはない固有の特徴や独自性をもち、優越性を発揮することです。もう一つは、少数であっても多くの人々を団結させ、さまざまな個別の要求を実現するために、多くの人々の力を一つに結集しうることです。
 世界でさまざまな民族が自分たちの歴史や伝統、文化を誇りとし、おたがいの民族の尊厳を認め尊重しあってこそ、すばらしい世界が実現します。