視点

JR福知山線の脱線事故は人災

〜利益、効率よりも安全を優先すべき〜

 4月25日午前9時20分、兵庫県尼崎市のJR西日本の福知山線(宝塚線)で電車脱線事故がおき、死者107人、負傷者460人という鉄道史上まれにみる大惨事となりました。
 電車はオーバーラン(電車が停止位置をすぎてとまること)した伊丹駅を約1分30秒遅れで出発しました。遅れを取り戻そうと、カーブにさしかかる前の直線区間で、制限速度を超える時速120キロ台前半で走り、減速しきれずにカーブに進入したとみられています。

安全より利益重視

 JR福知山線の脱線事故は、速度超過が直接の原因とみられ、JR西日本はカーブなどでの速度制御機能をもつ新型ATS(自動列車停止装置)を設置していれば、事故は防げたとの認識を示しています。
 2003年12月のダイヤ改正で、東海道・山陽線の大阪―三ノ宮間では新快速に加え、快速も時速120キロ運転を始め、ラッシュ時の所要時間を1〜2分短縮しました。
 ところが新型ATSが未設置の福知山線でも同じダイヤ改正で120キロ運転が始まりました。しかも宝塚―尼崎間では、停車駅を増やしたことによる遅れをスピードアップして取り戻すダイヤが設定されました。
 今回の脱線事故の背景として、安全性を無視したダイヤ改正が浮き彫りとなりました。
 結局、ATS設置のための技術者や安全予算は、乗客が多い東海道・山陽線の新システム導入に投入され、福知山線は置き去りにされました。
 JR西日本は3月期決算で過去最高の利益を記録しました。安全より利益重視のJR西日本の姿勢が浮かびあがっています。

運転士の重い負担

 87年の国鉄分割民営化によって発足したJR西日本は国の後ろ盾がなくなり、民間会社として財務体質強化が課題となりました。
 JR西日本発足時に5万1500人だった社員は3万2900人(2004年4月1日)まで減少し、とくに現場が中心の鉄道事業社員数は4万5600人から2万5700人(2004年3月末)と4割強減りました。その結果、社員1人あたりの負担が増えました。
 また、JR西日本では約4000人いる運転士の約4割が20代であり、30代はほとんどいないという偏った年齢構成になっています。
 社会人や経験者を積極的に採用している他社との違いが際立っています。
 また、ミスをすると再教育と称して反省文を書かされたり、草むしりをやらされたりする「日勤教育」を受けなければならなかったことも、若い運転士には負担となっていました。

労働者としての責任と自覚

 その後、事故を知りながらJR西日本の社員がゴルフコンペや宴会に参加していたことが明らかとなりました。
 また、たまたま事故電車に乗り合わせていた尼崎電車区と森ノ宮電車区の運転士は、死傷者の救出を手伝うこともなく現場を離れ、上司の指示に従って出社していたことが判明しました。
 JR西日本の効率や利益優先の経営にも問題がありますが、労働者自身が人の悲しみや痛みがわからなくなり、人間らしい思いを忘れていたのではなかったでしょうか。
 人の命をあずかる人間として当然もつべき責任感を育み、協力して働く人間関係をきずけなかったことも事故の原因とみなければなりません。
 労働者は、賃上げや昇進に汲々としたり、安全性を無視した会社の経営に甘んじるのではなく、人々に責任をもつ社会の主人としての意識をもつことが重要となっています。