インタビュー

女性の詩をメロディにのせて

吉岡しげ美さん(音楽家、共栄学園短期大学教授)

吉岡しげ美 (よしおか しげみ)
1949年東京生まれ
武蔵野音楽大学、日本女子大学、同大学院修士課程修了、音大卒業後舞台、映画の音楽、テレビ、ラジオの作曲、編曲を担当。
1977年以降、日本の女性詩人の詩に曲をつけ、ピアノの弾き語りを始め、国内外で活動している。
1986年から2年間家族でアメリカのバークレーに住む。アメリカ国内、中国、フランス、ドイツなどでコンサートを開催。
2005年3月28日紀伊国屋サザンシアターで公演予定。
著書「金子みすゞとうたう」「想ひあふれて」「花嫁人形@幸せのゆくえ」
アルバム「みだれ髪」「金子みすゞの世界」「わたしが一番きれいだったとき」

―なぜ女性の詩に曲をつけられるようになったのですか。

 自分の思いを歌で表現したいと思ったときに、新川和江さんの「わたしを束ねないで」という詩に出会ったのです。その詩は女性が自分らしく生きていきたいという宣言でした。
 その他にも私の心を動かした詩人に、与謝野晶子、岡本かの子、金子みすゞ、茨木のり子さんなどがいます。彼女たちの詩や短歌が背中を押して私を成長させてくれたように思います。

時代を超えて力をもつ詩

 当時「あなた好みの女になりたい」という歌が流行っていました。私は女性が男性から愛されることばかり願って、男性にあわせて生きていくのはおかしいと思いました。女性も自分の意志をもって生きていくべきだと思ったのです。その思いを自分で詩に書ければよかったのですが、長い間語り伝えられている女性詩人が書いた詩は時代を超える力をもっています。それでその詩に曲をつけて歌うことにしました。
 コンサートで歌うとみんな感動してくださいました。
 また、アメリカやフランス、ポーランド、ドイツなどでも歌いました(それぞれの国のことばに翻訳した詩を配布)が、詩のもつ力は大きく、国境や人種を超えて理解し、共感してくれました。
 多くの人に大きな力を与えられたことが、この活動を27年間もつづけてこられた原動力だと思っています。

―与謝野晶子は「君死にたまふことなかれ」を今から百年前に発表したのですね。

 当時反戦詩を歌うことはかなり勇気が必要だったことと思います。このような詩が古いと思えるような時代になってほしいのですが、残念ながらいまでもその詩の精神が通じる動きがありますね。

もっと豊かな文化に触れてほしい

―これから曲をつけたい詩などがありますか。

 清少納言の書いた枕草子の「春は曙」の段を曲にしたいと思っています。ゆっくり移り変わる四季の情景とそれを感じる人間の感性がとても大事だと思うの。私は万葉集を曲にしたり、知里幸恵さんの生涯を演劇にしたときは音楽担当をしました。アイヌ神謡集の一節「銀の滴降る降るまはりに」に曲もつけました。アイヌ神謡集は人間と生命あるものたちがいっしょになって輝いています。アイヌ語もとてもきれいです。
 連日いろいろな事件が起きていますが、親子、夫婦、恋人同士などの関係や愛情なども歌ってみたいですね。
 先日イラクから来日した劇団の公演を観る機会がありました。戦時下にありながら、歌や踊りで自分たちは元気だというメッセージを伝えていてとても感動的でした。
 日本でももっと質の高い文化に触れ、楽しめるようになったらいいですね。最近は私のコンサートにもカップルがよく来てくれるようになりました。特別の人たちだけでなく普通の人たちに聞いてもらいたいですね。

(11月27日編集部でインタビュー)