インタビュー

高齢者が地域で人間らしく生きられるネットワークづくり

川越博美さん(聖路加看護大学教授)
―2000年度に介護保険が導入され、来年は見直されることになっていますね。

 介護保険が導入され、在宅サービスが受けやすくなった点は改善された点ですが、在宅サービスが不十分で、家族の方の負担が十分軽減されていない面があります。
 一人暮らしや高齢者夫婦世帯を支えるためには、医療、介護、家事などさまざまなサービスが必要です。いまはサービスとサービスとのあいだの連係がきれており、生活全体の流れをみて、サービスを統合してその人なりの生活を組み立てることができていません。

患者の意志が尊重される在宅ホスピス

―先生は在宅ホスピス協会のお仕事もされていますが、在宅ホスピスとはどのような考え方ですか。

 ホスピスというのは、死にゆく人の今を生きる支援をするケアの考え方です。
 がんなどの末期の人のためのケアで緩和ケアと呼ばれています。病院などの施設でのホスピスケアはよく知られていますが、最期は自宅ですごしたいという方も多いと思います。
 ボランティアの組織をつくり、医師、看護師やヘルパーといっしょに家を訪問しケアをしています。
 病院ならば、スケジュールは病院側が決め、患者は基本的にそれにしたがわざるをえませんが、訪問看護の場合は、みなさん自分の家なので好きなように過ごしますから、最期まで自分の意志を貫くことができます。患者さんの自己決定を尊重し、わたしたちはそれを支える役割を果たすのです。
 緩和医療は、身体の症状だけでなく、最期を迎える方の気持ちや家族にたいする支援など、全体をみてケアをしていくことが求められます。そして、自然な形で最期を迎えられるようにします。

みんなで悩みをサポート

 わたしたちがケアを始めてから亡くなられるまで、平均35日間、短い人では一週間くらいで亡くなられることがあります。短期間で医師や看護師、ヘルパー、ボランティアでチームをつくり、信頼関係をきずき、緩和ケアをおこなう難しさがあります。
 病気になり治療法がないとき、少しでも延命したいと思う人もいますし、治らなければ自然に生きたいと思う人もいます。いずれにせよ、利用者自身に選択権があることが重要です。
 まだ家族の方が病気の当人に不治の病であるということを知らせることをさけるケースがほとんどです。ほんとうのことを知ったときの苦しさは想像以上のものがあるでしょう。だからこそほんとうのことを伝え、みんなでその苦しみをサポートしていくホスピスケアが必要です。

人生の同伴者

 ケアする人は、利用者の人生の同伴者であってほしいと思います。
 また専門職としての技術を身につけていく必要があります。心のケアが大事だと強調されがちですが、心のケアと同時に、喜んで食べてもらえるような食事をつくることのできる生活支援の技術も大事なのです。
 高齢者は人生経験も豊富ですし、その方の人間性を尊重して対応しなければなりません。

助け支えあう地域に

―高齢社会になっているいま、何が課題でしょうか。

 介護保険でのサービスをどのようにつくり直していくかということと同時に、地域全体で高齢者や死にゆく人たちをどのように支えていくかということが重要になってきます。
 地域が古い時代に戻ればよいということではありませんが、みんなが助けあい支えあっていた古き時代のよいものを見直して、新しい地域をつくっていかなければならないと思います。

(8月19日編集部でインタビュー)