インタビュー

元気がでる講談を語りたい

一龍斎春水さん(講談師)

 声優(「宇宙戦艦ヤマト」のヒロイン森雪役など)として活躍中に講談師をめざし、現在真打ち披露興行中の一龍斎春水(いちりゅうさいはるみ)さんに講談の魅力、創作にかける思い、女性としての生き方などをお聞きしました。

−講談の世界は女性が少ないのですか。
一龍斎春水さん(講談師)

 講談はもともといくさのない時代に軍記物を語り、いざというときの予行演習という意味合いもあったので男性が語っていました。しかし、講釈師は東京では男性は30人、女性は30数人と、いまでは女性の方が若干多いくらいになりました。ただ長くやっているのは男性なので真打ちは男性が多いです。

−なぜ声優をしていて講談師になろうと思われたのですか。

 お芝居や朗読の勉強をしていてもっと奥を深めたいと思っているときに今の師匠である一龍斎貞水の話芸に触れて、これだと思いました。
 目の前で聴いている方の反応をみながら自在に展開できる講談の世界に魅力を感じました。
 声優も講談も自分の声と日本語をつかうという共通性があります。私にとってはまったく違う分野ではなく、芸を豊かにするための延長上に講談があったのです。

−どのような創作をされていますか。

 いま力を入れているのは「火垂るの墓」(野坂昭如作)と「中村久子の生涯」です。「火垂るの墓」は子どもがでてくるので、アニメーションのように子役を演じながら戦争の悲惨さを語り継いでいます。戦争を知らない世代が多くなってきたので、講談を通して戦争に反対し、平和な社会をつくる橋渡しとしての役割を果たしていきたいと思います。
 中村久子さんは手も足もないのに人の何倍も努力して何でもできるようになった女性です。結婚を四回もしていて、二度も夫と死に別れたり、たいへんな苦労をしながら子どもも二人育てました。
 久子さんはもう亡くなりましたが、次女の富子さんが真打ち興行のときに応援に駆けつけてくれました。
 困難に立ち向かっていく人生を語りながら、いつも自分自身が叱咤激励され、これではいかんと反省させられています。聴いている方も元気になるようなお話ですが、私の生涯ネタとして大事にしていきたいと思っています。
 他にも樋口一葉とか63歳で身障者手帳を持っていながらパリダカールにでた女性などの話を作っています。

−シナリオもご自分で作るのですか。

 もちろんです。そうしないと自分の口調にはならないのでいろいろ調べて作ります。作っている間に覚えられますしね。

−古典はそのまま演じられるのですか。

 「山ノ内一豊の妻」という話がありますが、男の講談師が語る場合、妻はでてこないのですよ。妻がお金をくれたとか、最後に主君が「いい妻をもって幸せだな」という場面はありますが。私が語る場合は、妻を登場させるようにしました。古典を語る場合も女性としての視点をとりいれています。 

−今後の抱負は?

 何度も読みたい本、何度も見たい絵があるように、一度だけではなく何度も聴きたいと思うような講談ができるようになりたいですね。これだけ情報があふれる社会のなかで古典が生き抜いていくためには、発信する力がないと成り立たないのですよ。
 自分が生きている証として、聴く人の心をつかみ、生きる力となるような講談をすることが目標です。

(4月25日編集部でインタビュー)