インタビュー

老人の知恵と力を世直しに

なだいなだ(作家、精神科医)


なだ いなだ
1929年 東京生まれ
ペンネーム(スペイン語で ナニモナイ ト ナニモナイの意味)。
慶応義塾大学医学部卒業。
作家、精神科医として人間の心の問題やアルコール依存症などに取り組み多方面に活躍。
政治的閉塞状況を打破するために最近ヴァーチャル政党老人党をたちあげた。
北鎌倉の自然を守るためのトラスト運動にもとりくみ「北鎌倉の景観を後世に伝える基金」の理事長。
◆主な著書
「アルコール問答」「いじめを考える」「娘の学校」「影の部分」「教育問答」「こころのかたち」「心の底をのぞいたら」「人間、とりあえず主義」「こころを育てる―杉林がいいか雑木林がいいか」「神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話」「猫と海賊」「老人党宣言」その他多数。
老人党のサイト http://www.6410.jp/

―老人党をたちあげられたときには反響が大きかったですね。

 新聞に掲載されてからアクセス数が増え、選挙の前は1時間で1万通ものメールが届き、パンク状態になりました。
 最初は高齢者の人たちが多かったのですが、ボランティアで掲示板のサイトの維持を手伝ってくださる方は20代、30代の方もいます。
 これから老人になる50代の人たちは、老人たちよりむしろ自分たちの方が深刻だ、定年退職して年金が支給される前に再就職できないと、いままで貯めていた貯金をきりくずさなくてはならない、政治に無関心ではいられないと気づき始めたようです。
 ヴァーチャル政党ですから事務所があるわけでもなく、メールで掲示板に送るのに年齢は関係ないですからね。その人たちも老人党を名乗っています。
 イラク戦争に反対する運動をインターネットで呼びかけたワールドピースナウがたくさんの人を集めたことにヒントを得て始めました。
 過去の動員主義的な運動ではなく、一人ひとりが考えて参加するやり方が人々の心をとらえたようです。

―老人党は高齢者対策だけではなく、政治を変えていくことを目指しているのですか。

 日本の老人はかなり馬鹿にされていますからね。
 バブル崩壊後、税金をとるところがないために老人を犠牲にするようになりました。いままでは課税免除などの老人保護がありましたが廃止し、健康保険の負担も増やし、年金からも税金をとろうとしています。そのような政策に、愚痴を言うだけでなく、投票を工夫しようというわけです。選挙のとき、これと決めた支持政党に入れるのではなく、野党の政治家で一番当選しそうな人に投票して、政権交代をめざそうという提案です。民主党が伸びたのは、そうした考えを持った人が、増えたからです。
 それから、高齢社会に向かうなかで、高齢者の知恵や力を積極的に活用しようという主張でもあります。日本は二世議員や官僚が半分以上をしめていて異常です。これだから数の政治になり、理の通る政治にならない。自分の意見をことばでうまく表現し、アピールできる政治家だけが生き残っていって欲しいですね。
 元ハンセン病患者の方たちは、伝染しないのに長い間隔離するのはおかしいと声をあげましたが、その声が届くまで数十年かかりました。数の政治ではなく、声の届く政治が必要だとは思いませんか。

―日本は他の国と比べても、アメリカに依存していますね。

 ブッシュ大統領はアルコール依存から立ち直った人だそうですが、日本はアメリカ依存です。その病気の危険性を知って、立ち直っていかなければ。アルコール依存を、アルコールから自由を失った人間というのが、ぼくの定義ですが、日本はアメリカに依存しすぎ、自由を失っています。考え直す時ですね。
 いま世界の基軸通貨はドルです。貿易赤字と財政赤字がずっとつづいているのに、アメリカは、IMFから借金する必要がない。自国の貨幣ドルを印刷すればいいのです。そんな特権をもっているのはアメリカだけですよ。バブルがはじけた原因はドル防衛のためです。アメリカのために、庶民にツケがまわりましたが、私たちがよく勉強して理解すれば、政治家もあまり国民を馬鹿にはできなくなるでしょう。

―今年の参議院議員選挙にたいしての対策はいかがですか。

 まず議員年金の制度の廃止、これを国民と同じ、通算年金とすればいい。政治家が国民の年金よりずっと優遇されていいわけありません。
 小選挙区制度を変えられない以上は、接戦のところは、当選の可能性のある野党に投票するようにして、死に票をつくらないようにする。とりあえず政権交代です。あたらしい政府がダメなら、また政権の交代です。こうして四、五回政権交代がおこなわれれば、ダメな政治家は淘汰されていくでしょう。老人党の主張が、政治に影響を及ぼしていく可能性は大きいと思います。

(1月22日編集部でインタビュー)